もひとつのおつきさま

　

おつきさまは

ぷくーっとふくらんだり

チクチクと痛かったり

ふわっとあたたかくなったり

キューッとつめたく凍ったり

なんだかさわがしくて

ずっと落ち着かなかったのですが

ある日、とある夢をみて

今までが嘘のように

すっかり安心しました

　

そんなとき

もうひとつの

おつきさまがやってきて

くるくるまわりながら

ゆっくりと唄いはじめました

かなしげにも聴こえたけど

とても優しい唄声でした

それを聴いたおつきさまは

うれしくなって

しだいにじんわりと

満たされていきました

ところどころ

チクチク痛かったところや

凍ったままだったところも

その優しい唄声にすぅっと

溶けていくようでした

　

おつきさまは言いました

もうひとつのおつきさま

きてくれてどうもありがとう

　

おつきさまは

あしたからまた

ゆっくり満ちていこう

とおもいました

もうひとつのおつきさまが

そばにいてくれるので

きっと心細くはありません

　　

ゆっくりゆっくり

すべてが

満ちていきますよう

　

2020.2.24